♪〜♪♪〜♪〜
ちょっとした休み。
部屋でくつろいでいるイザークの耳に心地よいピアノ音楽が入ってくる。
彼の後ろにはピアノ。一人の少年がピアノに向かっている。
彼はソファにもたれたまま、動こうとしない。
不意にピアノの演奏が止まる。
「……?」
そこでようやく顔を上げると、先ほどまでピアノを演奏していた少年は真剣に楽譜とにらめっこしている。
どうやら気にくわない場所があったらしい。
彼は肩をすくめて、ソファから立ち上がる。
そして熱心なピアノ演奏者の後ろに立った。
「……続きは弾かないのか?ニコル」
「!イザーク。驚かさないで下さい!」
低い声に一度肩を震わせると、驚いた様に――しかし少しはにかんで――ニコルは振り向いた。そして困ったように言った。
「ごめんなさい、ちょっと気になった場所があったので……」
「構わないけどさ」
にっと笑ったイザークは再び自分の所定の位置に戻る。
それを見て少し不安そうにニコルは尋ねた。
「せっかくの休日なんですから、何処かに出掛ければ良かったんじゃないですか?」
「……別に行く気はねぇよ。大体お前、アスランに誘われた時、断ったじゃん」
「あれは……これを弾きたかっただけで」
「だろ?じゃ、俺もどこも行かないって事だ」
当たり前の様に言い放ち、ソファに身を沈めるイザークに少しだけ笑ってニコルはピアノの方へ向き直る。
♪〜♪♪〜
流れ始めたのはドヴィッシーの『月の光』。切なく哀しげなメロディーが辺りに広がる。
イザークがその曲の辛気くささに眉を上げるが、演奏者の至極楽しそうな表情に無言で鑑賞し始める。
数分の後。
美しい余韻を残しながら―曲は終わりを告げた。
ニコルは満足げに振り向いて、感想を求めようとしたが――
「くすっ、寝ちゃってますね、イザーク」
彼はソファに身を任せ、眠りの世界へ旅立っていた。ニコルはそっと手近にあった毛布をかけると、隣に腰を下ろし大きなあくびを一つする。
「僕も寝ようかな……おやすみなさい」
隣に人がいるという安堵感を得ながら、彼もまた眠りの世界へと誘われた。
彼らの子守歌は――『月の光』
END
作者後書
そういえば、初後書きですねぇ……。
前のMemoryは急いでいて後書き付ける暇もありませんでしたm(_ _)m
……皆様、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
作者の海菜デス。
少しでもお気に召したら幸いです……言い訳のようですが、わたくしこのたぐいのお話初めて書きました……う〜ん、難しい。
あ、苦情・ご意見は受け付けますが……石は投げないで下さいッ!でわっ(逃亡)